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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2805号 判決 1949年11月18日

被告人

鄭奉模

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役八月に処する。

但し三年間右刑の執行を猶予する。

理由

而して、原判決挙示の証拠を綜合すれば判示事実は十分認められる。しかも、原判決は所論のように具点二が誤信且畏怖したとは認定していないのである。原判決の確定した事実によると被告人は具点二に対し息子を警察から帰らせて貰うため金をつかつたと虚僞の事実を申向け且拳を相手の鼻先につきつけ殴らんばかりの氣勢を示して脅迫したが相手方が応じなかつたため未遂に終つたと言うのであつて詐欺罪成立要件としての欺罔行爲は虚僞の事実を告知すれば足り又恐喝罪成立要件としての恐喝行爲は言語によると文書によると動作によるとを問はず、害惡の通知が相手方に畏怖の念を生せしむべき程度のものであれば足り相手方が現実に誤信せず又は畏怖しなかつたときは未遂罪が成立するのであるから原判決が、その確定した事実を詐欺未遂罪及恐喝未遂罪の想像的併合罪として処断したのは正当である論旨後段は理由がない。

第二点について、

しかし、所論のように恐喝行爲の内容として害惡の通知が虚僞にしてしかも、相手方を畏怖せしむるに足るときは單に恐喝罪が成立するにすぎないけれども、本件は論旨第一点後段において説明したように欺罔手段と恐喝手段とを併用し錯誤と畏怖とにより金員を交付せしめんとしたのであるから二罪の想像的併合罪にあたるのである。論旨は理由がない。

〔註〕 破棄は、量刑不当による。

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